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『婚活マエストロ』を直木賞に推薦します(勝手に)

『婚活マエストロ』とは

具体的なストーリーの説明は、もっと上手に説明してくれている記事があるのでそちらに譲ることとする。

ざっくり概要だけお伝えすると、この本は『成瀬は天下を取りに行く』で作家デビューした宮島未奈さんが、成瀬後第一作として2024年10月に上梓したものである。

この本を手に取ったきっかけ

YouTube「出版区」で、安野夫妻が書店で1万円分本を買う動画があった。その動画内で、妻の黒岩里奈さんが担当編集として手がけた本として『婚活マエストロ』が紹介されていた。それが私がこの本を知ったきっかけである。

【安野夫妻登場!】都知事選で話題になった夫婦が本屋で1万円分お買い物!安野家の事情がいろいろと明らかに・・・【本ツイ!】【安野貴博/黒岩里奈】

さて、みなさんご存知の通り、黒岩さんと言えば都知事選に夫・安野さんが出馬した際、その演説の素晴らしさから注目を集めたことが記憶に新しい。そんな並外れたスピーチ力を持つ彼女は、この動画内でも非常に雄弁に、そして熱量の伝わるプレゼン(本の紹介)をしている。

しかし、正直この動画だけでは、節約中の私が『婚活マエストロ』を手に取る決定打とはならなかった。

では何が購入の決め手となったのか。新潮社の雑誌『波』である。

この雑誌の中で、『婚活マエストロ』が注目の新刊の一つとして挙げられていた。私はその素敵な紹介文を読み、これはもう買うしかないと決意を固めた。

キャラが立っている

『成瀬は天下を取りに行く』の主人公・成瀬もそうだったが、宮島さんの小説に登場するキャラクターは強烈な個性を持っている。

今回の『婚活マエストロ』でも、鏡原という女性のキャラクターが非常に良い。

高い能力やスキルを持っていて、信念があり、何かに邁進している女性。そういう女性を今いちばん魅力的に描けるのは、宮島さんだと思う。

ストーリーとしての読後感が素晴らしい

宮島さんの書いた小説を読み終えた時の読後感は特徴的だ。

本を閉じた後でも主人公たちが生き続けていて、まだまだ話が続いていく感覚があるのだ。そしてその主人公たちの未来が明るいことも確信できる。

そんな読後感があるから、毎回宮島さんの小説は読んで良かったと思えるし、次の作品もまた読みたいと思わせられるのだろう。

リアルなディテール

私は小説を「究極の人間あるある」だと思っている。

「こういう時ってそういう気持ちになるよね」「こういう状況だと人間ってそういうことするよね」

このような「あるある」をいかに陳腐でない形で表現するか。それこそが作家の腕の見せどころなのだ。

その意味でも今回の『婚活マエスト』は素晴らしかった。

婚活パーティーに参加した主人公は、こんなことを考える。

好きなタイプには「健康な人」と書いているが、健康で反応の悪い女性と、不健康で反応の良い女性だったら俺はどっちを選ぶだろう。いや、やっぱり不健康な女性は嫌だな。 宮島未奈『婚活マエストロ』文藝春秋、2024年10月、P146。

お分かりいただけただろうか。このリアリティが。

婚活でも就活でもそうだが、「理想のお相手」「理想の会社」は、活動中にどんどんブレていく。揺らいでいく。その迷いの中で活動を続ける姿。

こういうリアリティが随所に散りばめられているから『婚活マエストロ』は単にオモロいだけの消費対象を超えた作品になっているのだ。

宮島さんの次の作品が早く読みたい

「この人の新作が早く読みたい!」と思える作家さんがどんどん増えていて、うれしい。そういうものごとを増やしていくことが生きるためにはすごく大事なのだ。宮島さんの作品と出会えて本当に良かったなあ。